令和8年7月28日、横浜市鶴見区にある大本山總持寺にて、曹洞宗 社会福祉連盟 様主催の研修会に登壇し、「仕事の価値を高める、福祉現場のAI活用」をテーマにAI実務研修を行いました。

曹洞宗には、福井県の大本山永平寺と、横浜市の大本山總持寺という二つの大本山があります。今回の会場となった大本山總持寺は、曹洞宗寺院の根本であり、信仰の源でもある大変由緒ある場所です。
研修会には、お寺に勤務されている方々だけでなく、曹洞宗に関係する社会福祉施設の職員の皆様が参加されました。

福祉における仕事の価値とは?

今回の講演で特に大切にしたのが、「福祉の現場でAIを導入する意義とは何か」という視点です。
一般的な営利企業では、生成AIの導入による生産性向上が、コストの削減や利益の向上につながることが大きな目的の一つとなります。
しかし、福祉の現場におけるAI活用の価値は、単に業務を速く終わらせることや、人件費を削減することだけではありません。
記録や資料作成などの間接的な業務にかかる時間を短縮することで、職員の皆様に時間的、精神的なゆとりが生まれます。そのゆとりを、利用者様との対話や見守り、一人ひとりの状況に合わせた支援など、本来大切にすべき仕事に充てられるようにすることが、福祉現場におけるAI活用の本質的な価値だと考えています。
研修会の前日には、「私たちの仕事の価値とは」というテーマでグループワークが行われていました。
その内容も踏まえ、講演では「AIに任せられること」と「人が担い続けるべきこと」についてもお話ししました。
介護・福祉業界におけるAI活用事例紹介

また、実務的な内容についても大半の時間を割き、生成AIの基本的な仕組みや、できること・苦手なことをご説明したうえで、福祉現場における具体的な活用方法をご紹介しました。
会議録や研修報告書の作成、家族向け文書や行事案内の作成、業務マニュアルの整備、ヒヤリハット事例の分類・整理、日々の記録文の表現調整など、福祉現場で発生するさまざまな業務を取り上げ、実際の画面を使用した実演も交えながらお伝えしました。
また、文章作成を中心としたWord業務だけでなく、Excelを活用した表計算や情報整理、PowerPointを活用した研修資料や説明資料の作成など、生成AIを幅広い業務に活用する方法についてもご紹介しました。
参加された皆様にとって、生成AIを一部の専門的な業務だけで使用するものではなく、日常のさまざまな場面で活用できる身近な道具としてイメージしていただく機会になったのではないかと思います。
一方で、福祉現場において生成AIを活用する際には、個人情報や守秘義務への配慮が欠かせません。利用者様やご家族、職員に関する個人情報や機密情報を安易に入力しないこと、必要に応じて情報を匿名化すること、生成された内容を必ず人が確認することなど、安全に活用するための注意点についてもお話ししました。
文章のたたき台を作ること、情報を整理すること、形式を整えること、複数の案を出すことなどは、AIが得意とする分野です。
一方で、利用者様の表情や声の変化に気づくこと、相手の背景や感情を理解すること、その人にとって何が最善なのかを考えること、そして最終的な判断に責任を持つことは、人が担い続けなければなりません。
AIは、福祉職員の仕事を奪うためのものではありません。
職員の皆様が利用者様と向き合う時間を増やし、人にしかできない支援をより大切にするための道具です。AIを上手に活用することで、利用者様にとっても、働く職員の皆様にとっても、より良い環境をつくることができます。

今回の研修会での講演は、私自身にとっても、福祉の仕事の価値や生成AIの役割について改めて考える、大変貴重な機会となりました。
参加者の皆様からもご好評をいただけたとのことで、大変嬉しく思っております。
このたび貴重な機会をいただきました曹洞宗社会福祉連盟の皆様、そして研修会にご参加いただいた皆様に、心より御礼申し上げます。
